人間の女性に多く見られる甲状腺機能亢進症ですが、発症するのは人間だけでなく、中高齢(6〜10歳:人間にして40〜56歳)の猫にも多く発病し、犬の発症は稀です。
また10歳以上の猫においては10匹に1匹は罹患しているとも言われています。
甲状腺が亢進する原因として、甲状腺腺腫や腺腫様過形成の発生によるものが約98%くらいをも占めています。
残り2%くらいは、稀ですが腺癌によって甲状腺機能亢進症が引き起こされます。
原因とされる甲状腺腺腫や腺腫様過形成が、片側または両側に形成されたために甲状腺ホルモンを大量に産生します。
また腫瘍の70%くらいは両側に生じるもののようです。
猫が甲状腺機能亢進症を発症した場合に良く見られるのは体重減少です。
食欲はあるのでたくさん食べるのですが、食べても体重が減り、嘔吐、発熱、頻脈、下痢、多飲多尿の傾向になります。
他にも高齢猫なのに元気になったように動き、興奮状態になり、バセドウ病眼症と同じ眼球突出が出現したり、人間と同じバセドウ病症状を呈します。
甲状腺ホルモンにより新陳代謝が盛んになり、心臓に負担がかかり、不整脈や心筋症、身体の臓器へ影響を引き起こすこともあります。
やがて甲状腺機能の亢進症状がさらに進むと、食欲の低下がみられ、活発さも落ち着きを見せ始めます。
このように食欲は旺盛でも、体重の減少が目立つという愛猫がいましたら、一度病院で甲状腺機能の検査を受けてみてはいかがでしょう?
早期の発見により、他の臓器や身体への影響を減らすことが出来ます。
猫に起こる甲状腺機能亢進症の場合、治療には薬物治療または外科的治療、放射線治療が行われます。
薬物治療は、抗甲状腺薬を用いて甲状腺ホルモンの数値を安定させる目的がある治療法です。
しかし薬物には副作用があり、発疹、嘔吐、下痢、食欲不振などが現れることがあります。症状の重篤化を防ぐための薬物治療ですが、甲状腺に生じた腫瘍はそのままの状態となります。
外科的治療は、大きくなった甲状腺を切除する治療法です。
両側のうち片側の甲状腺だけでも残すことが出来たら、甲状腺機能や甲状腺ホルモンは正常化しますが、猫の甲状腺機能亢進症は両側にできることの方が多いため、甲状腺全摘術が適用されます。
摘出してしまうことによって、甲状腺機能亢進症の再発を防ぎます。
腫瘍摘出後は、甲状腺ホルモン剤の投与が必要になります。
術後の薬物投与はこの先もずっと服用し続ける必要があるかもしれませんし、途中で甲状腺ホルモンが安定を見せて、服用しなくて良くなることもあります。
外科的療法の方が治療効果が早く得られて、再発防止にもなります。
しかし、甲状腺機能亢進症を発症させるのは老猫に多いです。
人間と同じく年齢が高くなるほど手術におけるリスクや、手術中に甲状腺付近を通っている神経を傷つけ、障害が生じるかもしれないなどのリスクは高まります。
また甲状腺機能亢進症の手術を行える医師が少ないとも言われているので、外科的治療を望んでいる飼い主はかかりつけの獣医に相談してみてください。
放射線治療では、内服した放射線ヨードで甲状腺組織を破壊する方法です。
放射線といっても身体に影響のない程度の量ですが、数週間の入院が必要となります。
また、放射線を扱う設備を整えている動物病院は少なくいため、あまり多く実施されていないと言われています。